「公立と私立、どっちがいいんだろう」
転職を考えていた頃、この問いを何度も繰り返しました。でも調べて出てくるのは制度の説明ばかり。実際に両方を経験した人間の話がなかなか見つからなかった。
私は29歳で公立高校から民間企業(営業職)に転職し、30歳で私立高校の教員になりました。今も現役で教壇に立っています。この記事では、公立と私立の違いを給与・働き方・職場環境・向いている人まで15項目で全部比較します。
- 公立と私立の違いを15項目で徹底比較
- 給与・残業代・手当の実態(体験ベース)
- 「私立に向いている先生」の判断基準4つ
- 転職経験者だから言える「想定外だったこと」
給与・年収の違い
「私立は給料が低い」は正確ではない
よく「私立は給料が低い」と言われます。ただこれは正確ではありません。大手私立は公立より高い場合もありますし、中小私立は低めのこともある。学校によって差が大きいというのが正直なところです。
私の場合、30歳で私立に転職したときの年収は公立より上がりました。理由は基本給ではなく、手当の存在です。
| 公立教員 | 私立教員 | |
|---|---|---|
| 給与の決まり方 | 地方公務員給与表に準拠(一律) | 学校・組合交渉で決まる |
| 残業代 | なし(給特法により) | あり(労働基準法が適用) |
| 部活指導手当 | なし or 月数千円程度 | あり(学校による) |
| 補習・補講手当 | なし | あり(学校による) |
| 退職金 | 勤続年数に応じて手厚い | 学校による(要確認) |
働き方・労働時間の違い
公立の残業は「見えない」
公立教員には給特法が適用されます。残業代の代わりに月給の4%が「教職調整額」として上乗せされる仕組みです。月200時間残業しても、月20時間でも、もらえる額は同じ。
「やってもやらなくても給料は変わらない」——これが、公立の働き方を歪める根本的な原因です。
私立は労働基準法が適用されます。残業・部活・補習には手当が出る。当たり前のことですが、この「当たり前」が職場の空気をまったく変えます。
| 公立教員 | 私立教員 | |
|---|---|---|
| 法的根拠 | 給特法(残業代なし) | 労働基準法(残業代あり) |
| 残業時間の目安 | 月80〜150時間(全国平均) | 学校による。平均は公立より少ない |
| 部活動の扱い | 事実上強制。未経験競技の顧問も | 選べる。専任顧問が情熱を持ってやる |
| 土日出勤時の代休 | ほぼなし | 平日に振替あり(学校による) |
| 校務分掌の量 | 多い(人員が少ない) | 非常勤が多く分散できる |
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職場環境・制度の違い
異動の有無が「人間関係」を決める
公立教員は数年に一度、異動があります。人間関係が定期的にリセットされる。合わない上司も、苦手な同僚も、時間が解決してくれる。
私立にはこの仕組みがありません。同じ先生と定年まで働く可能性があります。
信頼関係を深める面では良い部分もある一方、職場の人間関係に問題が生じたとき逃げ道が少ない。転職先を選ぶ際に「職場の雰囲気」を徹底的にリサーチすべき理由は、ここにあります。
組合活動という「新しい文化」
私立に来て一番驚いたのが、組合(労働組合)の活動です。
公立では組合を意識することはほとんどありませんでした。私立では月1回程度の集会があり、給与・手当の値上げ交渉を理事長と直接行う機会があります。
「先生たちが経営陣と交渉できる」という構造は、公立ではまず経験できません。自分たちの待遇を自分たちで動かせるという感覚は、公立教員時代にはなかったものでした。
雇用の安定性と学校存続リスク
| 公立教員 | 私立教員 | |
|---|---|---|
| 雇用形態 | 地方公務員(非常に安定) | 民間労働者(学校の経営状況に依存) |
| 学校存続リスク | なし(税金で運営) | あり(少子化・経営悪化で廃校リスク) |
| 定員割れ時の影響 | 学校は存続する | 経営悪化・最悪廃校 |
転職前はあまり考えていなかったのですが、私立では生徒が来なければ学校が続きません。全教員が生徒募集に協力する文化があり、「10年後もこの学校はあるか」という不安は、公立時代にはなかったものです。転職先を選ぶ際は、直近5年間の生徒数の推移を必ず確認してください。
公立と私立を15項目で全比較
| 比較項目 | 公立教員 | 私立教員 |
|---|---|---|
| 給与の決まり方 | 条例(一律) | 学校・組合交渉 |
| 残業代 | なし(給特法) | あり(労基法適用) |
| 手当(部活・補習) | ほぼなし | あり(学校による) |
| 雇用の安定性 | 非常に高い | 経営状況に依存 |
| 異動 | 数年ごとにあり | 基本なし |
| 人間関係のリセット | 異動でリセット | 長期固定 |
| 入試問題作成 | なし(都道府県が作成) | あり(教員が作成・約5か月) |
| 生徒募集活動 | ほぼなし | 全教員で参加 |
| 組合活動 | 任意・活動薄め | あり(給与交渉等) |
| 評価・査定 | ゆるやか | 成果が処遇に反映されやすい |
| 部活動の自由度 | 低い(事実上強制) | 高い(選べる) |
| 校務分掌の量 | 多い(人員が少ない) | 少ない(分散できる) |
| 学校存続リスク | なし | あり(少子化リスク) |
| 退職金 | 手厚い(公務員水準) | 学校による(要確認) |
| キャリアパス | 公務員として安定 | 評価次第で早期昇進も |
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「私立に向いている先生」の判断基準
- 同じ職場で長く働いてもいい人。異動がないので、人間関係の変化を求める人には向いていない
- 自分の仕事を評価してほしい人。手当・査定がある環境で、モチベーションが上がる人
- 残業をなくしたい人。給特法の外に出て、時間に対する対価を求める人
- 行きたい私立学校がある人。学校選びの精度が転職の成否を決める
- 雇用の安定を何より優先したい人
- 定期的な環境のリセット(異動)を求める人
- 評価や査定にプレッシャーを感じる人
- 退職金・公務員年金などの福利厚生を重視する人
まとめ
- 公立と私立の最大の違いは「給特法 vs 労働基準法」。残業代・手当の有無が働き方全体を変える
- 給与は「私立が高い/低い」ではなく学校次第。基本給より手当の存在が年収を左右する
- 私立は異動なし。人間関係が長期固定されるため、転職前の職場リサーチが特に重要
- 入試問題作成(約5か月)・生徒募集活動など、公立にはない業務が存在する
- 私立に向いている先生:同じ職場で長く働ける人・評価を求める人・残業をなくしたい人・行きたい学校がある人
- 公立に向いている先生:安定を最優先したい人・定期的な環境変化を求める人
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